名古屋市や愛知県で中小企業M&A、会社売却、事業承継を検討しているオーナー経営者から、よく相談される論点の一つが役員退職金です。長年会社を支えてきた代表者が退任するのであれば、一定の退職慰労金を受け取りたいと考えるのは自然です。一方で、買い手から見ると、役員退職金は譲渡価格、会社の現預金、借入金返済、運転資金、税務リスク、金融機関説明、クロージング後の資金繰りに影響する重要な項目です。
役員退職金は、単に「売却代金とは別にもらえるお金」と考えると危険です。会社が支払う退職金であれば、支払原資は会社の資金です。会社の現預金が減れば、買い手が引き継ぐ運転資金も変わります。税務上も、不相当に高額と判断されないか、退任の実態があるか、株式譲渡の価格やクロージング条件と整合しているかを確認する必要があります。
愛知県内の製造業、金属加工、建設、物流、専門商社、サービス業、医療介護、飲食、小売では、代表者が営業、金融機関対応、採用、現場判断、主要顧客対応を長年担っているケースが多くあります。その代表者がM&Aを機に退く場合、退職金の設計はオーナー個人の老後資金だけでなく、買い手への引継ぎ、従業員への説明、金融機関との信頼関係にも関わります。
本記事では、名古屋・愛知の中小企業M&Aで会社売却を検討する譲渡企業向けに、役員退職金をどう考えるかを実務目線で整理します。検索意図として多い「会社売却で役員退職金は受け取れるのか」「譲渡価格と退職金はどう違うのか」「退職金を払うと企業価値は下がるのか」「税務で注意すべき点は何か」「金融機関や買い手にどう説明するか」に答える構成にしています。個別の税務判断は税理士等の専門家確認が必要ですが、M&Aの交渉でどのような順番で論点を整理すべきかをつかむことができます。
役員退職金は譲渡価格とは別の論点だが、買い手から見ると一体で評価される
株式譲渡では、譲渡企業株主が株式を買い手に譲渡し、対価として譲渡価格を受け取ります。役員退職金は、会社が退任する役員に支払う退職慰労金です。法的にも会計上も、株式譲渡代金と会社からの退職金は別の性質を持ちます。しかしM&A実務では、買い手は両者を完全に切り離して見ません。退職金を支払うことで会社の現預金が減るなら、買い手が引き継ぐ会社の価値や運転資金に影響するからです。
たとえば、会社に現預金が8,000万円あり、正常運転に必要な運転資金が4,000万円だとします。オーナーに退職金として3,000万円を支払うと、クロージング時の現預金は5,000万円になります。買い手が想定していた余裕資金や借入返済計画が変わるなら、譲渡価格、ネットデット、運転資金調整、クロージング条件の議論が必要です。退職金を払うこと自体より、支払後の会社が事業を継続できるかが重要です。
譲渡企業から見ると、長年の貢献に対する退職金と株式譲渡対価は別々に考えたいところです。買い手から見ると、会社から外に出る資金はすべて承継後の資金繰りに関わります。この見方の違いを理解しないまま交渉すると、譲渡企業は「当然もらえるはず」と感じ、買い手は「譲渡価格に織り込むべき」と感じ、認識がずれます。早い段階で、退職金の有無、概算額、支払時期、税務確認、譲渡価格との関係を共有することが大切です。
中小企業M&Aでは、役員退職金を一切払わない案件もあれば、クロージング前に支払う案件、クロージング時に支払う案件、買い手承認を前提に支払う案件、譲渡価格に実質的に反映する案件があります。正解は一つではありません。会社の資金余力、借入金、代表者の退任実態、買い手の資金計画、税務上の妥当性、従業員や金融機関への説明可能性で決まります。
名古屋・愛知のオーナー企業で役員退職金が問題になりやすい理由
愛知県の中小企業は、創業者や二代目、三代目の代表者が長期間経営している会社が多くあります。代表者が営業の顔であり、金融機関との窓口であり、採用と現場判断の責任者でもある場合、役員報酬は必ずしも市場水準や職務分担だけで決まっていません。会社の利益、家族経営、節税、資金繰り、金融機関への見え方を踏まえて報酬を調整してきたケースもあります。そのため、退職金をどう算定するかが単純ではありません。
製造業や金属加工では、設備投資、修繕、材料在庫、外注費、試作品対応などで資金需要が大きくなります。建設や設備工事では、未成工事、前受金、保証、協力会社支払、季節変動が資金繰りに影響します。物流では車両、燃料費、保険、事故対応が重要です。こうした会社で大きな退職金を支払うと、買い手は承継後の運転資金を慎重に見ます。単に現預金があるから支払える、という判断では足りません。
また、代表者個人と会社の関係が密接な会社では、役員退職金と同時に、役員借入金、代表者個人保証、個人所有不動産、個人名義車両、生命保険、親族従業員の給与、社宅、交際費、保険料、貸付金の整理が必要になることがあります。退職金だけを切り出すと見えにくいですが、買い手はオーナー個人と会社の資金関係をまとめて確認します。
名古屋・愛知の地域密着型企業では、地元金融機関との関係も重要です。金融機関は、代表者が退任し、株主が変わり、退職金で会社資金が減る状況を見ます。借入金、担保、保証、財務制限、返済計画、買い手の信用力によっては、事前説明が必要です。退職金はオーナー個人の話に見えて、実務上は会社、買い手、金融機関、従業員の全員に関わる論点です。
役員退職金を検討する前に確認したい基礎資料
まず確認すべき資料は、役員退職慰労金規程、株主総会議事録、取締役会議事録、役員報酬の推移、在任期間、職務内容、過去の退任役員への支給実績、決算書、月次試算表、資金繰り表、借入金返済予定、納税予定、賞与予定、設備投資予定、運転資金の季節変動です。規程がない会社も珍しくありません。その場合でも、どのような考え方で金額を決めるのかを整理する必要があります。
退職金は、会社法上の手続や税務上の妥当性に関わります。役員に対する退職慰労金は、定款や株主総会決議、支給基準、具体的な委任などの確認が必要になります。オーナーが100%株主であっても、買い手に会社を譲渡する前後では、手続の透明性がより重要になります。買い手は、クロージング前に適切な手続で決議されているか、後から会社に税務リスクや支払義務の争いが残らないかを見ます。
税務面では、役員退職給与が不相当に高額と見られないか、実際に退任または分掌変更の実態があるか、未払計上だけで処理していないか、短期勤続役員の退職所得課税に該当しないかなどを確認します。国税庁の情報でも、役員退職給与や分掌変更、特定役員退職手当等について注意点が示されています。M&Aでは支払額が大きくなりやすいため、税理士確認を前提に進めるべきです。
買い手向けの説明資料としては、退職金支払前後の貸借対照表、現預金残高、借入金、運転資金、ネットデット、正常運転に必要な資金、支払後の資金繰り、税務確認状況をまとめると分かりやすくなります。退職金の金額そのものだけでなく、支払っても会社が通常運転できることを説明できるかが重要です。
譲渡価格、ネットデット、運転資金調整との関係
中小企業M&Aでは、譲渡価格を営業利益やEBITDA、純資産、類似取引、資産内容、買い手のシナジーなどから検討します。役員退職金は、この評価の前提に影響します。たとえば、退職金をクロージング前に支払うなら、現預金が減り、純資産も変わります。退職金を支払わずに譲渡するなら、買い手が引き継ぐ会社には余剰資金が残る一方、旧代表者の退任処理をどうするかが残ります。
ネットデット方式や運転資金調整を使う場合、退職金の扱いは特に重要です。ネットデットとは、借入金などの有利子負債から現預金を差し引いた考え方です。退職金支払で現預金が減れば、ネットデットが増える方向に見えます。運転資金調整では、クロージング時点の売掛金、在庫、買掛金、未払費用、前受金などが基準運転資金と比較されます。退職金の未払計上や支払タイミングによって、調整額が変わることがあります。
譲渡企業が注意すべきなのは、退職金を後から追加希望として出さないことです。買い手が譲渡価格を提示した後に大きな退職金支払を求めると、買い手は価格前提が変わったと受け止めます。売却検討の早い段階で、退職金を希望するのか、概算額はどの程度か、会社資金から支払うのか、株式譲渡代金で調整するのかをM&A支援機関や税理士と整理しておくべきです。
また、退職金を会社から支払う場合、買い手は支払後の現預金が適正かを見ます。譲渡企業が余剰資金と考えている現預金でも、買い手から見ると、材料費、賞与、納税、設備修繕、季節変動、売掛金回収遅延に備える資金かもしれません。退職金設計では、過去の月次資金繰り、繁忙期、在庫水準、借入返済、設備投資予定を確認し、会社に残すべき資金を先に決めることが現実的です。
税務で注意したい不相当に高額な役員退職給与と退任の実態
役員退職金の税務は、M&A交渉だけで判断できません。税務上、役員退職給与が不相当に高額な部分は損金算入が認められない可能性があります。金額の妥当性は、役員の在任期間、職務内容、会社への貢献、同種同規模企業の状況、支給基準、過去実績などを踏まえて判断されます。実務では功績倍率の考え方が使われることもありますが、形式的な計算だけで安全と決まるわけではありません。
退任の実態も重要です。代表取締役を退任した後も、実質的に経営上主要な地位を占め続け、役員報酬も大きく変わらない場合、退職金として扱えるかが問題になることがあります。M&Aでは、旧代表者が一定期間顧問や会長として残ることがあります。その場合、引継ぎに必要な関与なのか、実質的に経営者として残るのか、報酬水準はどうするのかを整理しなければなりません。
短期勤続役員の退職手当等についても注意が必要です。国税庁のタックスアンサーでは、役員等としての勤続年数が5年以下の者に対する特定役員退職手当等について、退職所得の計算上の扱いが通常と異なることが示されています。創業者や長期在任代表者では該当しないケースもありますが、親族役員や途中就任役員がいる場合は確認が必要です。
税務リスクは、買い手にも影響します。クロージング前に会社が退職金を支払い、その損金性が後で否認されれば、会社に追加税負担が生じる可能性があります。買い手はそのリスクを嫌います。そのため、譲渡企業は税理士の確認メモ、計算根拠、決議資料、支払時期、退任後の関与内容を整理して、買い手に説明できる状態にしておくべきです。本記事は一般的な整理であり、個別の税務判断は必ず専門家に確認してください。
金融機関、リース会社、保証解除との関係
役員退職金は、金融機関説明とも密接に関わります。会社売却では、代表者保証の解除、担保、借入金の継続、返済条件、リース契約、当座貸越、手形や保証、信用保証協会付き融資などを確認します。そこに大きな退職金支払が加わると、金融機関は会社の資金繰りと返済能力を確認します。買い手が十分な信用力を持っていても、説明なしに会社資金を大きく減らすと不安材料になります。
金融機関に説明する際は、退職金支払前後の財務状況、譲渡後の株主と経営体制、代表者保証の扱い、買い手の支援方針、返済計画、資金繰り表を整理します。退職金はオーナー個人への支払ですが、金融機関にとっては借入先である会社の資金流出です。借入契約や金融機関との関係によっては、事前相談が望ましい場合があります。
リース会社にも注意が必要です。設備リース、車両リース、複合機、IT機器、ソフトウェアなどがある会社では、株主変更や代表者変更がリース契約上の届出や承諾に関わることがあります。退職金で資金が減り、同時に代表者保証や連帯保証の変更が必要になる場合、リース会社への説明も整理しておくべきです。
買い手候補との交渉では、退職金、借入金、保証解除を一体で確認します。譲渡企業が退職金を受け取っても、代表者保証が残るなら安心して退任できません。反対に、保証解除と退職金支払を同時に進めるには、金融機関が納得する引継ぎ体制と資金計画が必要です。M&A支援機関、税理士、金融機関担当者と連携し、クロージング前の順番を設計することが重要です。
具体例:製造業で退職金支払後の運転資金が問題になるケース
愛知県内の金属加工会社を例にします。売上は安定し、従業員は30名、主要顧客は自動車部品関連です。代表者は40年近く経営し、後継者不在のため同業グループへの株式譲渡を検討しています。会社には現預金が1億円ありますが、材料費、外注費、賞与、納税、設備修繕、売掛金回収サイトを考えると、通常運転に必要な資金は5,000万円程度です。代表者は退職金として4,000万円を希望しています。
この場合、退職金支払後の現預金は6,000万円となり、表面上は資金が残ります。しかし買い手は、老朽設備の更新予定、主要顧客の価格改定、材料価格上昇、賞与支払、借入返済を確認します。もし半年以内に大きな設備修繕が必要なら、支払後の資金余力は十分ではないかもしれません。買い手は譲渡価格の見直し、退職金額の調整、支払時期の変更、譲渡企業からの引継ぎ協力を求める可能性があります。
譲渡企業側の実務対応としては、退職金の税務根拠、支払後の資金繰り、設備修繕計画、借入返済予定、主要顧客の受注見通しを資料化します。退職金をクロージング前に全額支払うのか、一部を譲渡価格に織り込むのか、クロージング後の顧問報酬と分けるのかを検討します。買い手が納得できるのは、代表者の功労を尊重しつつ、会社に必要な資金が残る設計です。
このケースで避けたいのは、買い手との価格合意後に退職金を追加することです。買い手は、合意済みの企業価値や現預金前提が崩れたと感じます。早い段階で希望を共有し、税務確認と資金繰り確認を並行して進める方が、結果として譲渡企業の納得感も高くなります。
具体例:旧代表者が顧問として残る場合の退職金と報酬
会社売却後、旧代表者が一定期間顧問や会長として残るケースは多くあります。名古屋・愛知の中小企業では、主要顧客や協力会社、金融機関との関係を旧代表者が支えていることがあり、買い手もすぐに完全退任されるより、半年から2年程度の引継ぎを望むことがあります。この場合、退職金と顧問報酬を分けて考える必要があります。
税務上は、退職金として支払うには退任や分掌変更の実態が重要です。旧代表者が代表権を外れ、意思決定権限を買い手側に移し、報酬が大きく下がり、限定的な引継ぎ業務にとどまるなら、退任後の関与として説明しやすくなります。一方で、旧代表者が引き続き受注、採用、資金繰り、価格決定、人事を実質的に握るなら、退職の実態があるのか疑問が残ります。
買い手との契約では、顧問契約の期間、業務内容、報酬、競業避止、秘密保持、顧客訪問、従業員説明、金融機関同行、クレーム対応、緊急時対応を明確にします。退職金は過去の功労に対する支払、顧問報酬は譲渡後の具体的な引継ぎ業務に対する支払として区分します。これを曖昧にすると、買い手は二重払いと感じたり、税務上の説明が難しくなったりします。
譲渡企業にとっても、顧問として残る範囲を明確にすることは重要です。会社を売却した後も以前と同じ責任を負い続けるなら、精神的にも実務的にも承継の意味が薄れます。退職金、譲渡価格、顧問報酬、引継ぎ期間、権限移譲を一体で設計し、いつ、誰に、どの業務を引き継ぐかを決めることで、譲渡企業も買い手も安心してクロージングに進めます。
買い手に説明する資料の作り方
買い手に役員退職金を説明する際は、感情論だけでは不十分です。代表者が長年頑張ってきたことは重要ですが、買い手は会社の資金繰り、税務リスク、承継後の経営を確認します。説明資料には、退職金の希望額、算定根拠、在任期間、職務内容、役員報酬推移、規程や決議予定、税理士確認状況、支払時期、支払後の現預金、運転資金、借入金、納税予定、引継ぎ体制を含めます。
資料は、買い手候補の検討段階に応じて開示範囲を変えます。ノンネーム段階では退職金の詳細額まで出さず、譲渡条件に関わる可能性があることをM&A支援機関内で整理します。秘密保持契約後、買い手候補が絞られた段階で、概算額と支払方針を共有します。基本合意前後では、譲渡価格や運転資金調整と整合させ、最終契約前に決議手続や税務確認を固めます。
買い手への説明で有効なのは、退職金を支払っても会社に必要な資金が残ることを示すことです。月次資金繰り表、季節変動、賞与や納税、設備投資、借入返済、主要顧客の回収サイトを見せれば、買い手は支払後の安全性を判断しやすくなります。逆に、退職金額だけを提示して根拠や資金繰りを示さないと、買い手は譲渡価格を下げるか、条件を厳しくする方向に動きやすくなります。
説明資料には、税務上の断定表現を避けることも大切です。専門家確認前に「必ず損金になる」「税務上問題ない」と言い切るのは危険です。確認中であること、どの資料をもとに検討していること、最終的には税理士確認を経て決めることを明記します。買い手に対して誠実に説明する姿勢が、最終契約の表明保証や補償交渉にも良い影響を与えます。
譲渡企業が避けたい失敗
一つ目の失敗は、譲渡価格が決まった後に退職金を追加で求めることです。買い手は、譲渡価格を会社の現預金、借入金、利益、運転資金を前提に検討しています。大きな退職金支払が後から出ると、価格前提が変わります。退職金を希望するなら、売却検討の初期段階でM&A支援機関と共有し、価格交渉に織り込むべきです。
二つ目の失敗は、税務確認を後回しにすることです。役員退職金は金額が大きくなりやすく、税務上の取り扱いを誤ると会社にも個人にも影響します。M&Aのクロージング直前に税理士へ相談しても、支給手続、金額、退任実態、決議資料の修正が間に合わないことがあります。早めに確認する方が選択肢が広がります。
三つ目の失敗は、会社に残す運転資金を軽視することです。譲渡企業は現預金を余剰資金と見がちですが、買い手は承継後の運転資金として見ます。特に製造業、建設業、物流業では、売上が立っていても現金化まで時間がかかります。退職金で資金を抜きすぎると、買い手が不安を持ち、条件が悪化する可能性があります。
四つ目の失敗は、旧代表者の退任後の役割を曖昧にすることです。退職金を受け取る一方で、旧代表者が実質的に経営を続けるなら、買い手の経営移行も税務上の説明も難しくなります。顧問として残るなら、期間、業務、報酬、権限、責任範囲を明確にし、従業員や取引先への説明も整える必要があります。
売却相談前30日で進めたい実務チェック
役員退職金を含めて会社売却を検討するなら、最初の30日で完璧な答えを出す必要はありません。まずは、退職金を希望するか、希望するなら大まかな金額感はいくらか、支払原資は会社資金なのか株式譲渡代金で調整するのか、退任後にどの程度会社へ関与するのかをメモにします。このメモは買い手にそのまま出す資料ではなく、M&A支援機関や税理士と論点を共有するためのたたき台です。
次に、直近3期の決算書、直近12か月の月次試算表、現預金推移、借入金返済予定、納税予定、賞与予定、設備投資予定を一つのフォルダにまとめます。退職金を検討するには、会社にどれだけ資金を残すべきかを先に見る必要があります。現預金残高だけで判断せず、売掛金の回収サイト、買掛金の支払サイト、繁忙期と閑散期、主要顧客の検収タイミングも確認します。
三つ目に、役員報酬と在任期間の資料を整理します。創業からの経歴、代表就任時期、役員報酬の推移、過去に報酬を下げて会社資金を守った時期、個人保証や担保提供の有無、主要取引先や金融機関との関係構築への貢献を整理しておくと、退職金の考え方を説明しやすくなります。感情的な功労主張ではなく、会社への貢献を客観資料と一緒に示すことが大切です。
最後に、税理士、M&A支援機関、必要に応じて弁護士へ相談する順番を決めます。税務確認だけを先に行っても、買い手との価格交渉や運転資金調整と合わなければ実行できません。逆に、M&A条件だけを先に決めても、税務や会社法上の手続が後から問題になることがあります。30日の準備では、金額を確定するより、確認すべき関係者と資料をそろえることを優先します。
よくある質問
Q. 会社売却時に役員退職金は必ず受け取れますか。 A. 必ずではありません。会社の資金余力、税務上の妥当性、退任の実態、買い手との条件合意、会社法上の手続によって判断します。希望がある場合は早期に共有することが重要です。
Q. 役員退職金を払うと譲渡価格は下がりますか。 A. 会社の現預金が減るため、買い手の評価や価格調整に影響することがあります。ただし、会社に十分な余剰資金があり、税務や資金繰りの説明ができる場合は、条件設計で整理できることもあります。
Q. 退職金と顧問報酬はどう分けますか。 A. 退職金は過去の功労や退任に伴う支払、顧問報酬は譲渡後の具体的な引継ぎ業務への対価として分けて考えます。退任の実態、業務内容、報酬水準を専門家と確認してください。
Q. 税務上いくらまでなら安全ですか。 A. 一律の安全額はありません。在任期間、職務内容、報酬、会社規模、支給基準、同種同規模企業の状況などで判断されます。具体額は税理士等に確認する必要があります。
Q. 金融機関には退職金の話をすべきですか。 A. 借入金、保証、担保、資金繰りに影響する場合は説明が必要になることがあります。買い手、M&A支援機関、税理士と相談し、説明の順番と資料を整えるべきです。
Q. 退職金規程がない会社でも支給できますか。 A. 規程がないから直ちに不可とは限りませんが、支給根拠、決議手続、金額の妥当性、税務確認が重要です。M&Aでは買い手の確認も入るため、早めに資料化してください。
まとめ:役員退職金はオーナーの出口設計と会社の承継可能性をつなぐ論点
名古屋・愛知の中小企業M&Aで役員退職金を考えるとき、重要なのは、譲渡価格、税務、資金繰り、金融機関説明、引継ぎ体制を一体で見ることです。退職金はオーナーの長年の功労に関わる大切な論点ですが、会社から支払われる以上、買い手が引き継ぐ会社の財務にも影響します。譲渡企業と買い手の見方の違いを理解し、早めに資料を整えることが、納得できる条件交渉につながります。
譲渡企業が最初に行うべきことは、希望額を感覚で決めることではありません。在任期間、役員報酬、会社への貢献、規程や決議、税務確認、支払後の資金繰り、借入金、保証解除、顧問として残る場合の業務内容を整理することです。資料が整えば、買い手は退職金を単なる資金流出ではなく、承継設計の一部として理解しやすくなります。
名古屋M&A総合センターでは、名古屋市・愛知県の中小企業オーナーに向けて、会社売却、事業承継、企業価値評価、買い手探索、秘密保持、デューデリジェンス準備、金融機関説明、役員退職金を含む条件整理を支援しています。譲渡企業様の手数料は0円です。役員退職金を受け取りたいが譲渡価格や税務との関係が分からない段階でも、まずは資料整理から相談できます。
会社売却は、会社を渡すだけでなく、オーナー個人の出口、従業員の雇用、取引先との関係、金融機関との信頼を次へつなぐ作業です。役員退職金を丁寧に設計できれば、オーナーの納得感と買い手の安心感を両立しやすくなります。後から揉めないためにも、売却検討の早い段階で、退職金、譲渡価格、資金繰り、税務、保証解除を同じテーブルで整理することをおすすめします。
参考情報
- 国税庁「法人税基本通達 第7款 退職給与」 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_07.htm
- 国税庁「No.2737 役員等の勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2737.htm
- 国税庁「No.5203 使用人が役員へ昇格したとき又は役員が分掌変更等をしたとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5203.htm
- 中小企業庁「事業承継」 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/index.html
- 事業承継・引継ぎ支援センター https://shoukei.smrj.go.jp/center/
- 愛知県事業承継・引継ぎ支援センター https://shoukei-aichi.go.jp/
